荒戸源次郎監督による俳優のための実践的ワークショップ2015年5月


2015年5月2日(土)から6日(水)までの5日間。
映画監督でありプロデューサーでもある荒戸源次郎氏を講師にお迎えして、俳優のための実践的ワークショップを開催します。

荒戸源次郎氏の日本映画に対する貢献は多岐に渡り、一言でいうことはできません。しかし、そこをあえて分類してみると、次の4つの貢献に分類できるように思います。

(1)映画製作者(プロデューサー)としての貢献
(2)映画監督としての貢献
(3)人材の発掘者・育成者としての貢献
(4)「理想論」の実践による貢献

まず、最初の「(1)映画製作者としての貢献」ですが、これは単純に、荒戸源次郎氏が意図して製作に踏み切らねば、この世に存在しなかった幾つかの映画の名前を挙げることによって、その貢献の大きさを理解してもらえるんじゃないかと思います。

≪荒戸源次郎氏プロデュース作品の数々≫
 ・鈴木清順監督の大正浪漫三部作
  『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』
 ・阪本順治監督の初期三部作
  『どついたるねん』『鉄拳』『王手』
 ・坂東玉三郎監督作『外科室』
 ・大森立嗣監督作『ゲルマニウムの夜』

これらのいずれもが、そこに描かれる、美において、痛みにおいて、官能において、「徹底的」な映画です。そしてそのような映画たちは、プロデューサー荒戸源次郎氏の存在がなければこの世に存在しなかった映画たちであり、いかに荒戸源次郎という映画製作者の存在が日本映画史に多大な貢献をしているかが判っていただけるのではないかと思います。

次に、「(2)映画監督としての貢献」ですが、これは基本的には(1)と変わらないのですが、(1)に比べて、監督もご自身がやられているために、より純粋に、荒戸式の映画であると言えるように思います。これもその映画の名を挙げることによって、その貢献の大きさが理解してもらえるんじゃないかと思います。

≪荒戸源次郎氏監督作品≫
 ・『赤目四十八瀧心中未遂』
 ・『人間失格』

いずれもが、美において、痛みにおいて、官能において、「徹底的」な作品で、同時代に製作されている映画と比べて、そのクオリティーの高さ、重さは歴然としています。

その次に「(3)人材の発掘者・育成者としての貢献」ですが、これはどう言うことかというと、荒戸源次郎氏の製作する映画、あるいは監督する映画において、新人、あるいは無名の人間の起用が、キャストやスタッフにわたり、顕著に多いと言うことです。これも具体的にどのような人物たちが居るか、例を挙げることによって、荒戸源次郎氏の人材発掘における貢献の大きさを理解してもらえるんじゃないかと思います。

≪荒戸源次郎氏の見出した監督たち≫
  阪本順治、坂東玉三郎、大森立嗣、豊田利晃ら
≪荒戸源次郎氏の見出した俳優たち≫
  赤井秀和、大西滝次郎(現、信満)、寺島しのぶ、新井浩文ら
≪荒戸源次郎氏の見出したプロデューサーたち≫
  リトルモアの孫家邦(大森立嗣監督『まほろ駅前狂騒曲』などをプロデュース)
  КИНО(キノ)の椎井友紀子(阪本順治監督『人類資金』などをプロデュース)
  村岡伸一郎(大森立嗣監督「ゲルマニウムの夜」「ぼっちゃん」などをプロデュース)

彼らは、いずれもが、現在、日本映画界になくてはならない重要な人物たちです。これは「日本映画界における人材の発掘と育成」という面で、荒戸源次郎氏の果たしている貢献が小さくないことを端的に示していると言えます。

最後の「(4)「理想論」の実践による貢献」ですが、これはちょっと説明が必要です。映画界に限らないことですが、日本は良くも悪くも「慣行」を固定化します。そして「慣行」は「慣行」ですから、さしたる強い合理性があるわけでもなく、「これまでやってきたやり方だから」というような理屈で存続し、たとえ、その「慣行」に問題や弊害があっても、多くの人がそれを前提に行動するうちに、いつしかその「慣行」を誰も疑わないようになってしまいます。たとえば、映画をヒットさせるためには、有名漫画を原作とし、人気アイドルを主人公とし、テレビ局などによる製作で、配給を東宝などのメジャーに依頼し・・・というような「慣行」あるいは「常識」ができあがります。しかし、荒戸源次郎氏はそこを疑います。荒戸源次郎氏はこう言います。「ヒットさせる条件は、良い映画を作ることです」。「良い映画」とは「良い脚本」のあることであり、その映画に貢献できる「腕の良いスタッフ」がいることであり、「ネームバリューや芸能界における人気番付とは関係なくその映画の内容に適したキャストがそろっている」ことである。拍子抜けするほど、当然の正論です。人気者のアイドルの誰かをキャスティングできたとしても、その映画が良い映画となるとは限りません。だから、その映画にふさわしいならば、全く無名の新人を主人公に起用するというのが荒戸源次郎方式なのです。しかし、そのようなやり方については、多くの日本人が「理想論」であり「現実的ではない」と言うだろうと思います。「たしかに良い映画作りというのはそういうものであろうが、しかし必ずしも良い映画がヒットするとは限らない。ヒットさせるには有名なキャストの出演や原作がベストセラーであるというような強いフックが必要であり、テレビ局がバックにつき強力な宣伝工作が行われることが前提で、逆に言えば、そのようなフックやテレビ局の協力さえあれば、内容がそれほどでなくても映画はヒットする。それが現実だ」と。しかし、そのような「現実論者の理屈」をよそに、荒戸源次郎氏は「良いものを作る」という「理想論」を貫き、その「理想論」で勝ってきたという実績があります。たとえば「ツィゴイネルワイゼン」は、そのキャストの渋さや、その内容の難解さ、そして大手を敵に回した自主的な製作配給体制にもかかわらず、ただ作品が映画的に面白いということだけで、日本最大メジャーである東宝製作配給の黒澤明監督作品「影武者」をおさえてその年の日本映画のベストワンに輝くことになります。「どついたるねん」もそうです。「赤目四十八瀧心中未遂」もそうです。鵺のような得体のしれない「慣行」が横行する日本において、大手に頼らずに、また小手先の宣伝戦略に頼らず、「良いものを作る」という映画づくりの王道をすすむことによって勝利の可能性があることを示したのは、日本においては、いまのところ荒戸源次郎氏を置いて他に居ないと言うことができるのではないかと思います。

そのような荒戸源次郎氏が、いま映画監督として、「大樹によらずとも良いものはあたる」という正論を掲げて、人生の最後になるであろう映画を撮られようとしています。その構想を聞けば誰もが驚くような壮大な一本です。今回のワークショップは、その映画作りの基盤となる「出会い」のチャンスです。ぜひ、荒戸源次郎氏の掲げる理想に共鳴し、この革命的な一本に加わる強い思いを持った人に参加してもらえればと思います。

(アロッタファジャイナ主宰 松枝佳紀)

講師プロフィール

荒戸源次郎(Arato Genjiro)

荒戸源次郎監督
——
1946年長崎生まれの博多育ち。鈴木清順監督『ツィゴイネルワイゼン』(80)、『陽炎座』(81)を製作。映画界の常識を破るエアドーム型映画館〈シネマ・プラセット〉で長期興行を成功させ社会現象に。とくに『ツィゴイネルワイゼン』は80年キネマ旬報ベストテン第1位、ベルリン映画祭特別賞、ブルーリボン賞最優秀監督賞、第4回日本アカデミー賞最優秀作品賞等を受賞。89年、阪本順治監督のデビュー作『どついたるねん』を製作し再び映画界に旋風を起こす。他に鈴木清順監督『夢二』(91)、坂東玉三郎監督『外科室』(92)など、多くの話題作を製作、良質な映画を世に送り続けてきた。03年、自らが監督した『赤目四十八瀧心中未遂』で、14ヶ月ロングラン、映画賞30冠超受賞の快挙を成し遂げる。05年には『ゲルマニウムの夜』で大森立嗣監督をデビューさせた。10年、生田斗真主演で『人間失格』を監督。14年、新国立劇場において佐野史郎主演舞台『安部公房の冒険』を演出。現在は、次回作を準備中。映画の製作者、出演者に関わらず、新人を見出し育てることに定評がある。荒戸門下には、プロデューサーでは、制作配給会社リトルモアの孫家邦、制作会社КИНО(キノ)の椎井友紀子などがおり、俳優では、『赤目四十八瀧心中未遂』で主演の大西滝次郎(現、信満)や『ゲルマニウムの夜』で主演の新井浩文、映画監督では、阪本順治、大森立嗣、豊田利晃など、錚々たるメンバーが居る。

ワークショップ概要

【日程】 2015年05月02日(土)~5月6日(水) 計5日間

【クラス】
 昼クラス 13:30-16:30 、 夜クラス 18:00-21:00
 (どちらか希望のクラスに所属してもらいます)

【募集対象】 
 映画俳優となるチャンスをつかみたいと真剣に思っている男女。
 年齢・経験・事務所への所属・無所属は問いません。

【募集人数】 昼夜クラスとも20名程度

【クラス】【会場】 都内某所

申し込み方法

本ワークショップはすでに開催終了しています。

お問合せ

アロッタファジャイナ
E-mail workshop.for.actor@gmail.com