三浦大輔監督インタビュー


11月21日から24日まで開催する「俳優のための実践的なワークショップ」の講師である「愛の渦」の三浦大輔監督にインタビューをしてきました。ワークショップに参加する方、ぜひ参考にしてみてください。(聞き手:ワークショップ主宰・松枝佳紀)ワークショップの詳細については→三浦大輔監督のワークショップ

▼映画に参加する前提としてのリアルな演技

松枝「今度のワークショップでは、こういうことをやろうとか、なにか構想ありますか?」

三浦「いつもやってることですけど、最初は、ぼくなりに、どうしたらリアルな演技が成立するのか、という理論を、言葉で説明します。それで演技をしてもらって、体感してもらって、問題があればなおして行こうと思っています。これまでの経験から言うと、どんなに問題がある人でも、三つ言うだけで、だいたいよくなります」

松枝「三つだけでですか?」

三浦「はい。何かインチキ商法みたいですが(笑)、その三つで、演技するときに絶対必要なものは意識することができるようになるのですが、演技はやはり、理屈だけじゃどうにもならない部分もあるので、そこからは個人の問題になってくるのですが」

松枝「三浦監督は、ご自身の映画や演劇の現場でも、そうやって俳優をリアルな芝居に導く演技指導をするんでしょうか?」

三浦「演劇なら時間をかけて芝居の修正をするということも可能ですが、映画は時間が無いのでそういうわけにはいきません。現場に入ってしまえば大したリハーサルもできません。すぐに撮影しないといけない」

松枝「ということは、演技方法を伝える時間が無いわけですから、映画に出演する俳優は何を言われるでもなく最初からリアルな演技が出来なければいけないってことですね」

三浦「どうやってほしいかは必死に伝えますけどね。でも、すれ違ってしまったら、何とか誤摩化すしかない」

松枝「じゃあ本当に今回のワークショップは「映画の現場で必要とされるリアルな演技を身につける」良い機会になりそうですね。三浦さんに限らず若い監督たちは皆リアルな芝居を俳優に求めているように思いますから、他の監督の現場でもプラスになりそうです」

▼リアルな演技が求められるのは歴史的に自然な流れ

松枝「ところで、三浦さんがリアルな演技にこだわりはじめたそもそものきっかけってなんなんでしょうか?」

三浦「ドキュメンタリーを良く観ていたということが大きいと思います」

松枝「ドキュメンタリーってドキュメンタリー映画とかですか?子供の時からそういうのを見ていたんですか?」

三浦「いえ、いわゆる堅苦しいドキュメンタリー映画とかそういうものではなくて、テレビとかで普通にやっているようなバラエティー番組のドッキリだったり。あとは、あいのりとか最近だとテラスハウスとかですかね。そういうドキュメンタリー的な要素が強い番組がもともと好きだったんです。そしてそういう番組を見ていて感じるのは、「虚構は本物に勝てない」ってことです。僕は、そういった絶望感から、リアルなものにこだわるようになったという気がします。実際、舞台で、本当にドキュメンタリーをやっていた時もありましたし、結局、その舞台でやるドキュメンタリーは破綻しちゃいましたけど、そこで得た経験をもとに、自分でちゃんと演出して、脚本も書いて、リアルな芝居を前提にした虚構を作ろうっていうふうに考えて演劇をやってきたという感じです」

松枝「平田オリザさんの現代口語演劇ってあるじゃないですか。そこからの影響ってなかったんですか?」

三浦「良く言われるんですけど、平田オリザさんからは影響受けていないんですよね。全然観てなかったし。もちろん存在は知っていましたけど、そこからの影響は全く無かった。ただ、僕らの世代の演劇にはリアルを志向するという流れがあったんです。大声で台詞を言ったり、派手な動きをしたり、そういう演劇的なものを排除して、なるべく押しつけがましくないというか、いわゆる恥ずかしくないものを作ろうとする流れが。そういう流れが登場してくるのは演劇の歴史において自然なことだったと思うんです。僕はそういうことをやり出したのが比較的早かったということだと思います。僕らの下の世代にはまた違う流れがあるようですけど」

▼ドキュメンタリーな三浦作品がドラマチックでもある理由

松枝「三浦さんはテレビドラマとかは観たりしますか?」

三浦「最近のはあまり観ないんですけど、実は僕の原点となるのはテレビドラマなんですよ。中高時代はほんとテレビドラマばっかり観てて、映画とか小説とか、演劇とかも全然観ていなくて。なんと言っても影響受けたのは、当時流行ってたトレンディードラマですよ。普通の月9のドラマとか。野島伸司さんのドラマとか。ほとんどの連ドラをビデオに撮って保存して、何度も観ていましたね」

松枝「日本のドラマにおける演技的なフェイク度合とかは気にならなかったんですか?」

三浦「そのときはそんなこと考えて観ていなかったですよ。やっぱり物語とか、そっちの方に惹かれて観ていたので」

松枝「僕、三浦さんの作品って、ドキュメンタリー的なところと、物語的なところがちゃんと調和してるところが凄いと、いつも感動していました」

三浦「僕の中で、ドキュメンタリーに惹かれた時間と、テレビドラマにハマった時間が融合してるんだと思います。僕は連ドラにハマった時期を経て、その後ドキュメンタリー的なことに惹かれていったわけですけど、子供の時に見ていたドラマ的なカタルシスはいまだに僕の中に残っていて、だから演技的なドキュメンタリーの先にそういうものがあるといいなと思っているんです」

▼三浦作品に性的な表現は欠かせないのか?

松枝「三浦作品には性的な描写は必ずありますが、それは三浦監督の中では絶対的に必要なものだということですね?」

三浦「いや、そうでもないんです。これまでの作風がそうだったから、そう思われるのも仕方ない面があるのですが。実は最近、段々とエロいことに興味がなくなってきていますね。いままでは男と女がくっついたとか、そういうことばかりが人生の中心であったのが最近はどうでもよくなってしまったという感じで、もっと人生を大きく捉えるようになったというか。単純におっさんになったんだと思います」

松枝「それはとても重要なことかもしれない(笑)。やっぱり、そういう色眼鏡で見られることって多いと思うんですよね。だから、今回のワークショップも応募して来る俳優たちもエロいことしか興味ない監督なんじゃないかなって思ってくるんじゃないかって」

三浦「そうなんですかね。女性は脱ぐ覚悟で来いみたいな(苦笑)。ぜんぜんそういうことないんですよ。あくまでリアルな人間のやりとりに興味があるだけで、裸になるとかそういうのは全然いらない。実際そんなことに、ぼくは興味無いんですよ。映画で裸が出てくるシーンがあったとしても、作品の中の、ある必要な過程において、なるべくウソをついてるように見せたくないという前提で作ったら避けて通れなくなるだけで、やる必要がなければやらない方がいいと思っています。やっぱり、そのことばっかり取りざたされちゃうし、伝えたいことの核がぼやけちゃったりするから。ましてワークショップですから、そういう肉体的なことではない精神的な嘘のないやり取りをちゃんと見せてもらいたいと思っています」

松枝「三浦さんが、家族とかそういう方向に興味が向き始めていることもありますしね」

三浦「実際、最近の僕の作品にはあまりエロいシーンはないんですよ。映画『愛の渦』は、そればっかりですけど(笑)」


2014/11/21-11/24
三浦大輔監督による俳優のための実践的ワークショップ
詳細はリンクから→http://alotf.com/ws/ws17/