片桐健滋監督インタビュー


2016年12月15日から18日まで開催する「俳優のための実践的なワークショップ」の講師である片桐健滋監督にインタビューをしてきました。ワークショップに参加する方、ぜひ参考にしてみてください。(聞き手:ワークショップ主宰・松枝佳紀)ワークショップの詳細については→片桐健滋監督の俳優のための実践的ワークショップ

<<現在、片桐健滋監督は、廣木監督作品にチーフ助監督として参加中である。ワークショップまで時間がないので、その現場の合間を縫って、片桐さんにインタビューをさせていただいた。>>

松枝:現場中すみません。

片桐:いえ、わざわざ福島まで来ていただいてありがとうございます。

松枝:ワークショップの日にちは決まってますけども、どういうワークショップにするか、決めていませんでした。話さないといけないと思っていたんですが、結構ギリギリまで廣木組の現場があるようなので、待てずに来ちゃいました。

片桐:松枝さんの書いた僕のワークショップの宣伝文を読まさせていただいたんですが、正直戸惑っています。というのは、どういう人が来るかわからない中で、僕の作品に必ず出演できるみたいな感じで書かれいてますが、実際、参加者によっては、該当者なしということだってあるわけで…

松枝:該当者なしで全く構いません。むしろ無理やりキャスティングしていただくことで作品の質が落ちてしまうようなことを望んでいません。というか、必ず気に入っていただける俳優・女優がいるという自信があるから、こういうこと言っているんですけど。

片桐:そういうことなんでしょうね。

松枝:予想外に良い俳優がいるという自信があります。これまでも講師をしていただいた監督たちにはそう言っていただいています。予想外に良い奴がいて、キャスティングを決めてもらう、キャスティング決まると、あのワークショップでキャスティングが決まるという噂が流れる。すると噂を聞きつけて、更に良い俳優・女優が集まる。良い俳優が集まるから、またまたキャスティングが決まる。という感じで、最近、良い循環が続いています。

片桐:なるほど。

松枝:ワークショップで何をやろうとかありますか?

片桐:何をやるかはっきり決めてないんです。正直どうしようかなと。

松枝:前言っていただいた●●●●はぜひやってもらいたいと思っています。いままでのワークショップでそんなことをする監督はこの11年いなかった。絶対面白いと思いますし、片桐さん的な観点で、俳優の人間性を見ることができるはずです。いわゆる台本読んで演技してっていうワークショップはそれはそれでいいですが、どちらかというと片桐さんの思うことをしてほしいんです。公園で走り回ったり、木登りしたりしてもいいし、みんなで料理を作ってもいい。なんでもいい。それをすることで、片桐さんが「俳優の本質」を見極めることができて、本当に「使いたい」と思える俳優を探せるなら何でもいいんです。

片桐:なるほど。自分がこの人と映画を作りたいなと思える人を探すというスタンスでやればいいってことですね。

松枝:はい、そうです。

片桐:いま、考えているのは・・・・(しばし、ワークショップのアイディアを語っていただく・・・非常に面白いがネタバレになるので書きません)

松枝:非常に素晴らしいと思います。

片桐:もう少し考えます。

松枝:はい。

片桐:……あの、いまからダメなことを言うんですが

松枝:?

片桐:僕はたぶん世の中の映画監督や、映画を撮りたいと思っている人たちに比べて、圧倒的に見ている映画の数は少ないと思うんです。それに趣味嗜好も偏ってる。でもだからこそ、自分の趣味趣向に合う映画が邦画にあまりないという思いが基本的にあるんです。だから、そういう「自分が観たいと思える映画」を撮れるといいなと思っています。

松枝:片桐さんが観たいと思う映画は、たとえばどんな映画ですか?

片桐:ひとことで言うと、ファンタジック・コメディーですね。

松枝:ファンタジック・コメディーってどんなのでしょうか?

片桐:たとえば、「アメリ」を撮ったジャン・ピエール・ジュネの作品とか、「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツアの作品とか、「グランド・ブタペスト・ホテル」のウェス・アンダーソンの作品とか、そういう作品です。音楽の使い方にしろ、色使いにしろ好きなんですよね。日本で言えば、伊丹十三監督の作品とか。僕はそういうのが好きなんです。

松枝:なるほど。

片桐:小さい出来事を大きくエンターテイメントに広げて映画にする。僕はそういうのをやりたいと思ってます。

松枝:しかし、映画って色々なジャンルがあるじゃないですか。社会的な矛盾を問うような映画を撮られている方もいるし、クリント・イーストウッドのような人も居る。そういった中で、片桐さんが、ファンタジック・コメディーを選択するというのは、どういうことなんでしょうか?それを撮ってみたいと思う、片桐さんの本当の動機ってなんなんですかね?

片桐:本当の動機?

松枝:たとえば、最初に出会った映画がそういうものだったからとか…

片桐:映画をみんなで見て「わーっ」て一体になる。そういうのが「ニュー・シネマ・パラダイス」にも描かれていますけど、僕は理想の映画館だと思うんですよね。で、僕は、そういう理想の映画館にかかるような映画を作りたいんです。

松枝:なるほど

片桐:僕も社会派なことを考えないわけではない。だけど、それを映画にするにしても、落としどころをコメディーとかエンターテイメントに落としていきたいんです。理由は、そうしたほうが「多くの人に見てもらえる」からです。作るからには「見てもらえる人」の数は増やしたい。だからコメディーにしたいなと思っています。だって一生懸命作っても、見てくれなかったら悲しいじゃないですか。そんな映画、たくさんあります。見てもらえない映画。でも、そうなってしまうのはイヤなんです。

松枝:ちょっと視点を変えた質問します。

片桐:どうぞ

松枝:片桐さんは、崔さん、根岸さん、水田さん、廣木さんなどなど、沢山の監督たちに、助監督としてついてきたわけですが学ばれたものってなんですか?沢山の映画監督の現場を経て。

片桐:見本をいっぱい手に入れたことですかね。いただけるDNAと、これはいらないというDNAを自由に取捨選択できる。それが助監督やってきたことのメリットです。

松枝:なるほど

片桐:(だいぶ長い時間考えておられ)・・・松枝さん、僕ね、正直、演出って良くわからないんですよ。

松枝:?

片桐:何が演出なのかなって、いつも思うんですよ。俳優さんが自由にお芝居するじゃないですか。それでそのままOKという監督も居れば、俳優がカメラ前に立つまでにすべての演出を終わらせる監督もいる。永遠にズルズルと現場でお芝居をやっていって、「違う違う」と言うだけで進める監督もいる。……演出って何なのか、僕ほんとわかってなくて。俳優さんに対する姿勢とか、現場に対する姿勢とか、精神的なものはわかるんです。でも、テクニック的なものというのは、監督それぞれの、それこそ個人の趣味趣向なので、見ていてそれいいなと思う時もあれば、全然違うなと思う時もあって、結局、そのどれがふさわしいのか、僕の現場で使えるのか、使えないのか、それはその時になるまで正直分からないんですよ。

松枝:とはいえ、助監督の経験がない人に比べると、沢山の「具体的な道具」を持ってるってことですよね。それは確実に役立つ気がします。

片桐:そうだといいんですけどね。まぁ、たぶん、材料を持って無いよりは持ってるので、悪くはないと思っています。

松枝:どういう俳優に出会いたいですか?

片桐:僕のイメージをアシストしてくれるような俳優さんと出会えれば幸せだなと思っています。

松枝:どういう人がアシストしてくれそうですか?

片桐:勘がいい人ですかね。あと優しい人(笑)

松枝:なるほど

片桐:あと、映画だけじゃなくて、いろんなことに興味を持っている人がいいですね。音楽好きだとか、この小説好きだとか、自分の血と肉になることをセルフで勝手にやっている人のほうが面白いんで。

松枝:そしてそういう人のほうが、経験として豊富なデータベースを持ってるから、片桐さんが何をやりたいのか察する能力が高くなるかもしれない。結果として、そういう人が「勘がいい人」になる気がします。

片桐:そうですね。それから「ちゃんと準備している人」がいいですね。僕自身がそうしてきたという自負があるので、やはり俳優にもそれを求めますね。そういう人が好きです。

松枝:片桐さんが準備している作品についてお伺いしたいのですが。

片桐:TCP(TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2015)というTSUTAYA主催の企画コンペで選ばれた「ルームロンダリング」という企画です。

松枝:ルームロンダリング?マネーロンダリングなら聞いたことありますが。悪いことして稼いだお金を、いったん別のことに使うことで、クリーンな資金に見せかける方法ですよね、「マネーロンダリング」は?

片桐:そう、まさにそれです。つまり、不動産で事故物件ってあるじゃないですか。殺人があった部屋とか。でも、あれって、次に誰か住むと、その人が出て行ったあとは、その物件は事故物件じゃなくなるんです。だから、その事故物件にわざわざ誰かを住ませて、事故物件じゃなくすることを、マネーロンダリングならぬ、ルームロンダリングと名付けてみたんですが、そのルームロンダリングをするのを仕事にしている女の子が主人公の物語です。

松枝:お金のために事故物件に住んじゃう女の子の物語!

片桐:しかも、その彼女には事故物件で死んだ人の幽霊が見えてしまうんです。そして、その幽霊と関わる中で、彼女は、生き別れになった自分の母親を見つけ出す…というファンタジーコメディです。

松枝:大変面白い。原作あるんですか?

片桐:いや、オリジナルです。

松枝:なんと。すばらしいです。いつぐらいに撮影を予定しているんですか?

片桐:確定ではないですが、4月から6月くらいの間に。

松枝:今回のワークショップから出演者が決まる可能性もあるわけですよね?

片桐:可能性はあります。もちろん、ひとりも出せない可能性もあります。ところでエキストラでもいいんですか?

松枝:いや、エキストラはダメです。ちゃんとした役付でお願いします。できれば重要な役でお願いしたいです。

片桐:確約はできませんが、その人にこういう役をやらせてみたい、場合によっては、新たな役を書いてみたいと思えるような人と出会えることを期待しています。

松枝:そういう俳優・女優がいることは、これは「確約」します。

片桐:わかりました(笑)、その「有望な俳優たち」に会えるのを楽しみにしています。

(2016年12月1日、JRいわき駅そばの居酒屋にて)