4-8.アクターズ・スタジオで許された「嘘」


マツガエ:嘘かホントか知らないんですけど、クリント・イーストウッド監督って、基本、リハーサル無し、撮り直し無しのワンテイクで、映画を撮っていくって言うじゃないですか。あれって、「真実」を追求したものだと思うんですよね。繰り返していくと、どうしても嘘が生まれちゃうというか、なぞってしまう気がして。その時に、ちょっと疑問があるんですけど、たとえば舞台とか、ロングランの一か月公演ぐらいになると、30ステージとかこなさなければいけなくなるわけじゃないですか? さっきのクリント・イーストウッドのワンテイク理論で考えると、30公演毎回、あるいは1公演でも、2時間を全部「真実」で通すのは難しくないでしょうか?

リエナ:いや、もうホントに難しいです(笑)。アクターズ・スタジオは「真実!真実!真実!」と、とにかく「真実!」だし、それができないと「死んじゃう!」みたいな集団だから、みんな頑張って「真実」をしぼり出して、しぼり出してやっているんですけど、そんなときに、その「真実」を出来なくて、もがき苦しんでいたら、先生がやってきて言うんです。「嘘付けばいいんだよ!」って(笑)「だれよりも上手く嘘付けばいいんだよ」って。「時々はそういうことも必要なんだ」って。先生から、そのことを聞けただけで、ちょっとだけ安心するというか、ホッとしました(笑)。もちろん通常「真実」でやろうと全力でやるのが前提ですけど。

ボビー:100%ゾーンに入って、毎回、毎回そこに居るというのは難しいし、「技術的」な面に頼らなければいけないときももちろんありますよ。

つづく

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1.なぜアクターズ・ヴィジョンで俳優教育が必要になったのか

2.アップス・アカデミーとBNAWの違い

3.じっくり基礎教育に時間をかける

4.本当に俳優たちが学ぶべきもの、それを学べる環境に

5.マイズナー・テクニックやメソッドに対する誤解

6.普遍的な技能としての「リアリズム演技」

7.歌舞伎も「リアリズム演技」である?
 
8.アクターズ・スタジオで許された「嘘」

9.世界市場への接続

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米倉リエナ(Lyena Yonekura)
俳優教育者、アップス・アカデミー演技講師
芸能事務所Camino Real(カミノレアル)代表取締役。
ニューヨーク大学演劇学科で演劇を学び、日本人女性初のニューヨークアクターズ・スタジオ正式メンバーとなる。
帰国後は演出家としても活動しつつ、アップスアカデミーの講師をしている。
また、現在はCamino Real(カミノレアル)を設立しシャーロット・ケイト・フォックスやMIYAVIなど日本国内外の俳優のマネジメントに携わる。
2児の母。

ボビー中西(Bobby Nakanishi)
俳優、俳優教育者、演出家、BNAW主宰
コント赤信号のもとで俳優を始めるが1990年渡米
フィル・ガシーのもとでマイズナー・テクニックを学び
後に、サンフォード・マイズナー本人のもとで本格的にマイズナー・テクニックを学ぶ
アクターズ・スタジオのオーディションに合格し正式なメンバーとなる。
2011年に日本に拠点を移し、俳優教育の場BNAWを主宰している。

松枝佳紀(Matsugae Yoshinori)
脚本家、演出家、アクターズ・ヴィジョン代表
京都大学経済学部を卒業後、1995年、日本銀行に入行。
映画や演劇に対する夢覚めやらず2000年に退職
現在、シナリオライター、企画者、制作者として映画を作りながら
俳優のためのワークショップ「アクターズ・ヴィジョン」を運営している。