4-6.普遍的な技能としての「リアリズム演技」


リエナ:海外ではチェーホフやシェイクスピアの舞台をやれるようになることが役者の目指すべきスタンダードです。一方、日本では何が目指すべきスタンダードなのか分かり難いと思います。例えば、役者さんがニュースキャスターをやったり、歌をやたり、演技以外の事をやる事が多い。

マツガエ:たしかに、日本は仮面ライダーにでて、どうなって、CMでて、歌出してみたいな、芸能界的なスタンダードはあるかもしれないですけど、俳優としてのキャリア形成はあまり明確ではないかもしれませんね。

リエナ:そうなんです。日本では、スタンダードが沢山ありすぎて、どこに向かっていけば良いのか不明瞭な気がします。だから、芝居が下手でも有名になれたりする現実がある。

マツガエ:結果として、俳優修業がおろそかになっている。

リエナ:そうだと思う。

ボビー:アメリカの99%の演技スタイルは、スタフラニスキーを源流とするグループ・シアターから派生した「リアリズム演技」だから、基本的に目指すものは、誰に習っても、リアリズム演技なんですよね。

マツガエ:ヨーロッパやアメリカの映画を観ていると、「リアリズム演技」以外の作品を見つけるのが難しい。一方、日本では漫画チックな誇張した演技を求めるものもあるし、それを望んで観ている人たちもいる。けれど僕は真実ではない演技を観るのは耐えられないし、同じように、日本人の観客・視聴者の多くも、世界の映画や舞台などを目にするようになっているので、「リアリズム演技」を望む俳優・観客たちが増えてきているのも事実だと思う。今後、ますます「リアリズム演技」が必要になってくるように思います。

つづく

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1.なぜアクターズ・ヴィジョンで俳優教育が必要になったのか

2.アップス・アカデミーとBNAWの違い

3.じっくり基礎教育に時間をかける

4.本当に俳優たちが学ぶべきもの、それを学べる環境に

5.マイズナー・テクニックやメソッドに対する誤解

6.普遍的な技能としての「リアリズム演技」

7.歌舞伎も「リアリズム演技」である?
 
8.アクターズ・スタジオで許された「嘘」

9.世界市場への接続

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米倉リエナ(Lyena Yonekura)
俳優教育者、アップス・アカデミー演技講師
芸能事務所Camino Real(カミノレアル)代表取締役。
ニューヨーク大学演劇学科で演劇を学び、日本人女性初のニューヨークアクターズ・スタジオ正式メンバーとなる。
帰国後は演出家としても活動しつつ、アップスアカデミーの講師をしている。
また、現在はCamino Real(カミノレアル)を設立しシャーロット・ケイト・フォックスやMIYAVIなど日本国内外の俳優のマネジメントに携わる。
2児の母。

ボビー中西(Bobby Nakanishi)
俳優、俳優教育者、演出家、BNAW主宰
コント赤信号のもとで俳優を始めるが1990年渡米
フィル・ガシーのもとでマイズナー・テクニックを学び
後に、サンフォード・マイズナー本人のもとで本格的にマイズナー・テクニックを学ぶ
アクターズ・スタジオのオーディションに合格し正式なメンバーとなる。
2011年に日本に拠点を移し、俳優教育の場BNAWを主宰している。

松枝佳紀(Matsugae Yoshinori)
脚本家、演出家、アクターズ・ヴィジョン代表
京都大学経済学部を卒業後、1995年、日本銀行に入行。
映画や演劇に対する夢覚めやらず2000年に退職
現在、シナリオライター、企画者、制作者として映画を作りながら
俳優のためのワークショップ「アクターズ・ヴィジョン」を運営している。