4-1.なぜアクターズ・ヴィジョンで俳優教育が必要になったのか


マツガエ:僕が自分ところのワークショップに「アクターズ・ヴィジョン」と名前を付けたのは二年前なんですが、映画監督を講師に迎えて行う俳優指導のワークショップはその前に11年もやってまして、有名無名の俳優女優さんたちにたぶん4,000人ぐらい会ってきているんですけど、この人芝居がうまいなあと思う俳優さんは、たいがい、リエナさんところのアップス(UPSアカデミー)の卒業生か、ボビーさんところのBNAW(ブナウ、Bobby Nakanishi Acting Workshop)の生徒であるというのが僕の印象で、ボビーさんと僕はいま組んで俳優教育をやっていますが、そういうことをやる前は、俳優たちに「芝居うまくなるためにはどうしたらいいですか?」と聞かれたら、アップスかBNAWにいけ」と言っていたぐらいなんです。何人も僕に、アップスに行けと言われてアップスに行っている子たちがいるはずです。

リエナ:それはどうもありがとうございます。

マツガエ:こちらとしては育てていただいてありがという気持ちです。なにより、うちの「アクターズ・ヴィジョン」は俳優と監督がたを結びつけること、仕事にすることを目的にしていますので、俳優教育自体はもともと興味なかった。リエナさんところやボビーさんところでやってもらえればいいと思っていた。俳優教育が済んだ人がうちに来て現場を勝ち取るというようなイメージだった。

リエナ:それがどうしてマサヤス(ボビーさんの愛称)と組むことになったんですか?

マツガエ:うちのワークショップは、映画やドラマのキャスティングが決まるので、役をとりに何度も参加する「常連」がいるのですが、その中で何度通っても監督がたから評価されない子たちがいて、でも全然ダメな子たちじゃないんですよ、だけど芝居にどうしても問題がある。考えすぎるんです。考えすぎて芝居がダメになる。そういう傾向があった。で、親心というか、この子たちをどうにかしたいと思ってしまって、彼らに、アップスに行けと言っても行かないものですから、アップスと提携してうちで教室を開いてもらうか、ボビーさんに教室を開いてもらうかと検討しているときに、独りの女優さんがボビーさんのところに通って、彼女の芝居がずいぶんよくなったものだから、一緒にやりませんかとボビーさんにお願いしたというのが経緯です。

リエナ:なるほど、そうだったんですね。

つづく

0.top

1.なぜアクターズ・ヴィジョンで俳優教育が必要になったのか

2.アップス・アカデミーとBNAWの違い

3.じっくり基礎教育に時間をかける

4.本当に俳優たちが学ぶべきもの、それを学べる環境に

5.マイズナー・テクニックやメソッドに対する誤解

6.普遍的な技能としての「リアリズム演技」

7.歌舞伎も「リアリズム演技」である?
 
8.アクターズ・スタジオで許された「嘘」

9.世界市場への接続

——
米倉リエナ(Lyena Yonekura)
俳優教育者、アップス・アカデミー演技講師
芸能事務所Camino Real(カミノレアル)代表取締役。
ニューヨーク大学演劇学科で演劇を学び、日本人女性初のニューヨークアクターズ・スタジオ正式メンバーとなる。
帰国後は演出家としても活動しつつ、アップスアカデミーの講師をしている。
また、現在はCamino Real(カミノレアル)を設立しシャーロット・ケイト・フォックスやMIYAVIなど日本国内外の俳優のマネジメントに携わる。
2児の母。

ボビー中西(Bobby Nakanishi)
俳優、俳優教育者、演出家、BNAW主宰
コント赤信号のもとで俳優を始めるが1990年渡米
フィル・ガシーのもとでマイズナー・テクニックを学び
後に、サンフォード・マイズナー本人のもとで本格的にマイズナー・テクニックを学ぶ
アクターズ・スタジオのオーディションに合格し正式なメンバーとなる。
2011年に日本に拠点を移し、俳優教育の場BNAWを主宰している。

松枝佳紀(Matsugae Yoshinori)
脚本家、演出家、アクターズ・ヴィジョン代表
京都大学経済学部を卒業後、1995年、日本銀行に入行。
映画や演劇に対する夢覚めやらず2000年に退職
現在、シナリオライター、企画者、制作者として映画を作りながら
俳優のためのワークショップ「アクターズ・ヴィジョン」を運営している。