1-6.俳優を志す人たちに対するアドバイス


(これはドラマ「anone」「先に生まれただけの僕」のディレクター水田伸生さんと俳優教育者ボビー中西さんの対談「日本の俳優教育のいまとこれから」の一部です)
 
松枝:そろそろお時間となるのですが、最後に、俳優を志す人たちに、なにかアドバイスをいただけますか?

水田:俳優を目指すなら、ボビーのところに通うのは近道だと思うよ。ただ、ボビーのところに通って「俳優を生涯の仕事にしよう」と思う人と、「俳優を諦めよう」と思う人も出てくると思う。でもそれが重要で、人の幸せって望みをかなえることだけじゃないんだと思うんだよ。早めに諦めさせて別の道を歩くように背中を押してやるのも大事なことだと思うんだ。俳優の評価はあくまでも他人がするもの。だからいくら情熱があっても駄目なものは駄目。他人がダメと言えばダメなんだ。ただ、抜け道はあってね、80歳まで持続できたらライバルが少なくなるし、人生というとてつもない積み重ねがあるから、勝つ可能性はある。80まで粘れる亀なら最後には勝つ。

ボビー:僕は俳優として不器用だったからこそ、がむしゃらにやった。その結果、器用な人の五倍、十倍、演技のテクニックが血肉になった部分がある。もしも僕が器用でいろんなことを簡単にできていたら、できない人の気持ちがわからないから、いまのような教師にはなっていなかったと思う。不器用という短所が、教育者となるうえでは長所になっている。いまの僕のいちばんの目的は、演技のやり方がわかってなくて苦しんでいる人に、やり方がわかれば演技は上達するんだよということを伝えられることだと思う。演技もスポーツと同じで、練習は苦しい。だけど、正しい練習、正しいトレーニングをすれば、必ず上達し、楽しいと思える感覚がいずれ必ずやってくる。それを信じて、いまの苦しさから逃げずに、正しいトレーニングを続けてもらいたいなと思っています。

松枝:本日はお忙しい中ありがとうございました。舞台「杏仁豆腐のココロ」をご覧になった後に、もう一度お二人からお話が聞けると嬉しいなと思います。

(2017年11月20日、麻布十番にて)

現在、水田伸生監督による俳優のための実践的ワークショップ参加者を募集中です!!!
 
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水田伸生(Mizuta Nobuo)
日本テレビ放送網執行役員・制作局専門局長
日本大学芸術学部演劇学科卒業後、1981年に日本テレビに入社。
入社後はテレビドラマの制作に携わる。
2010年、『Mother』で第65回ザテレビジョンドラマアカデミー賞監督賞を受賞。
2014年、『Woman』の演出により芸術選奨文部科学大臣賞放送部門を受賞。

ボビー中西(Bobby Nakanishi)

俳優、俳優教育者、演出家、BNAW主宰
コント赤信号のもとで俳優を始めるが1990年渡米
フィル・ガシーのもとでマイズナー・テクニックを学び
後に、サンフォード・マイズナー本人のもとで本格的にマイズナー・テクニックを学ぶ
アクターズ・スタジオのオーディションに合格し正式なメンバーとなる。
2011年に日本に拠点を移し、俳優教育の場BNAWを主宰している。

松枝佳紀(Matsugae Yoshinori)
脚本家、演出家、アクターズ・ヴィジョン代表
京都大学経済学部を卒業後、1995年、日本銀行に入行。
映画や演劇に対する夢覚めやらず2000年に退職
現在、シナリオライター、企画者、制作者として映画を作りながら
俳優のためのワークショップ「アクターズ・ヴィジョン」を運営している。

0. はじめに
1. リアリティある演技をするためには何が必要なのか
2. 教育によって、天才俳優に近づくことが出来るのか
3. 俳優教育の重要性を日本人はわかっていない
4. マイズナー・テクニックの効果
5. 俳優教育と俳優演出
6. 俳優を志す人たちに対するアドバイス