日本の俳優教育のいまとこれから


日本テレビ「anone」「先に生まれただけの僕」ディレクター水田伸生
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俳優教育者 ボビー中西

満島ひかりを主演にしたドラマ「Woman」の衝撃を覚えている人は少なくないだろう。そのドラマを企画し演出した人こそが日本テレビのディレクター水田伸生さんである。その後も岡田将生主演「ゆとりですがなにか」、そして現在絶賛放映中の櫻井翔主演「先に生まれた僕」など、優れたエンターテイメントでありながら、家族や社会の深いところを的確にえぐるリアルなドラマを作り続けている。その現実を見据える容赦ない視線はテーマやストーリーだけではなく、俳優演技にも向けられている。日本のテレビドラマの多くは、視聴者の心をつかむためにわかりやすい記号的な演技を過剰に求めるが、水田さんのドラマでは、俳優たちは驚くほどリアルに生きている。登場人物がリアルに生き、リアルに苦しみ、リアルに答えを出さなければ、その思いは日々リアルで生きている視聴者には届かないという思いが水田さんにはある。だから「俳優演技のリアルさ」においても水田さんのドラマは日本のドラマの中で際立っている。ディレクターとなる遥か昔の大学生の時代からスタニスラフスキー・システムなどの俳優演技理論に興味をもっていたというからそのリアルな演技に対する思いは筋金入りだ。

一方、俳優教育者でありBNAW主宰のボビー中西さんは、俳優を志した20代で、演技の上達しない自分を変えるために渡米をし、俳優教育者の泰斗サンフォード・マイズナーのもとでリアルを獲得するためのマイズナー・テクニックを学び、数々のハリウッドスターを輩出したことでも名高いアクターズ・スタジオにおいて、メソッド演技学び、日本人として二人目の生涯会員となる栄誉を受けた。そして20年間の俳優修業を経て日本に戻ってきた彼が選んだ道は俳優教育者としての道だった。2016年、アクターズ・ヴィジョン代表の松枝は、参加俳優のレベルアップを図るために、ボビーさんにクラスを持ってもらえないかと提案した。同志を求めていたボビーさんはこれを承諾した。手探りながら始めた9か月のクラスは参加俳優たちに見違えるような変化をもたらした。それに驚いた松枝は、この教育の成果を披露するために、2017年12月公演を行うことを決めた。出演者のふたりはクラスの優秀生武藤令子と関幸治。演出はボビーさん。鄭義信さんの傑作戯曲「杏仁豆腐のココロ」をウッディーシアター中目黒で披露する。

俳優演技について「演出家」として考え続けて来た水田さん、同じく、俳優演技について「教育者」として考え続けて来たボビーさん。日本の俳優教育に対して必要性を感じ、熱い思いをもっている2人に座談会を開いてもらった。日本の俳優教育についてこれからどうすればいいのかを考える「俳優教育者会議」第一弾として、実にふさわしい話し合いになった。話題を決めずにざっくばらんに日本の俳優教育の現在と未来について話し合ってもらった。

水田さんは、現在、来年1月から放映になる広瀬すず主演のドラマ「anone」制作のために日々忙しい。対談の前日もロケハン。しかし、ボビーさんが12月にやる舞台「杏仁豆腐のココロ」の稽古をしていると聞くと、わざわざ稽古見学に来てくださった。座談会の初めは、その稽古を見たときの水田さんの疑問から始まった。

1. リアリティある演技をするためには何が必要なのか

2. 教育によって、天才俳優に近づくことが出来るのか

3. 俳優教育の重要性を日本人はわかっていない

4. マイズナー・テクニックの効果

5. 俳優教育と俳優演出

6. 俳優を志す人たちに対するアドバイス